相思相愛系シズイザ小説もどきにつき注意
2015-05-15(金)
全体公開
南向きの部屋住まいだから、西日の強さに悩まされることはあまりない。
とはいえ、大きく開いた窓から差してくる陽は昼寝をしていた臨也の目を覚まさせる程度には強かった。
ソファから起き上がり伸びをする。
軽く眩んだ目を瞬いて夕日を避ける。
何か夢を見た気がする、……中身は思い出せないや。
ふわりと胸騒ぎがしたが、気にとめる程でもないかと家事に取り掛かる。
(仕事を終わらしてから昼寝したはずだから仕事は残ってないはず…あ、もう5時半前か。もう夕寝って時間帯だな。今日はちょっと早いって言ってたからあと1時間くらいでシズちゃん帰って来ちゃう…晩御飯の用意しないと。それと……)
夕陽の差し込みでまだ明るいキッチンに立つ。少ない洗い物を片付けて冷蔵庫の中身をチェック。
ピーマン、パプリカ、にんじん、ごぼう、玉ねぎ、れんこん、胡瓜、豚肉、鶏胸肉、牛挽肉少し………酢豚を作ろうか。ご飯は昨日多めに炊いたのがある。少し時間もあるからもう一品作ろうか。
思考を巡らせながら豚肉の下ごしらえをする。鶏胸肉を茹で、その間にそれぞれ野菜を切る。ピーマン、パプリカ、にんじん、玉ねぎ…もう一品は棒棒鶏にする事にしたので胡瓜も塩揉みしてから千切りに。茹で終えた鶏胸肉を冷水に入れて冷やす。レンジで2分ほどにんじんを蒸す。冷めた鶏胸肉の水気を拭き取り皮を取る。豚肉の水気も取って片栗粉をまぶす。フライパンに油を敷き玉ねぎを炒める。色が変わってきたらにんじん、ピーマン、肉、と順に入れていく。全体に焼き色がついたのでケチャップを入れて酸味を飛ばす。馴染んできたら酢、砂糖、酒、醤油、鶏ガラの素、片栗粉を加えて炒める。油が弾ける音と酢豚独特の甘い匂いが空腹を刺激してきた。ひとまずメインの一品完成。
「ただいまー」
「おかえり。ご飯もうちょっとで出来るから待ってて」
静雄が仕事から帰ってきた。借金滞納者共が静雄を苛つかせる奴等ばかりだったのだろうか、声が低い。
臨也としては、暴力反対なので必要とあらば拳を振るうような仕事は嫌なのだが、静雄が珍しく長く就けている職場がここのため文句は胸にしまっている。
酢豚が冷めない内に、皮を取っておいた鶏胸肉を食べやすい大きさに切る。
醤油、砂糖、酢、合わせ味噌、練りゴマ、ごま油、はちみつ、味覇などを小さめのボウルにそれぞれ量を入れてちゃっちゃと混ぜる。なお、静雄の好みを考慮して豆板醤は入れない。
鶏胸肉、皮、胡瓜を皿に盛り付け上から上で作ったタレをかける。
酢豚も大皿に盛り、おひつで温めておいたご飯を静雄につぐよう頼む。
茶碗、箸、主菜、副菜、飲み物、手と声を揃えて「いただきます」。
「シズちゃん酢豚どう?」
「ん、んまい」
「そ、良かった。あっ俺棒棒鶏に辣油掛けよ」
「おう取る」
仕事の愚痴や今日のご飯の感想、二人で観察している近所の野良猫の動向など他愛もない話をしつつ箸を進める。
「ごっそさん」
「はいはい。流しに置いといて」
「おう。あ、幽のドラマ」
「りょうかーいテレビ点けるね」
夕食後はテレビ前のソファに座り幽が出演するドラマの録画を見る。習慣である。
左が静雄で、右が臨也が座るのも習慣、というか癖だ。
もう6月も後半に入り、ドラマも昨日放送のもので第10週目。そろそろ話も大詰めだ。内容をざっと説明すると周りに嵌められ人生を転落していく薄幸体質の主人公と、その主人公を支えつつも不倫相手にしているヒロインの恋愛が中心というものだ。幽は主演。
30分ほど過ぎただろうか。少し前にCMをリモコン操作で飛ばして、今は今回の話のクライマックスにさしかかっている。
ヒロインである女優と幽の暗いラブシーン。手首を繋ぎ、崖の淵に幽演じる主人公と女優演じるヒロインが立った。心中をするのだ。セリフが読まれる。
『生まれ変わっても君を愛すと誓おう』
木々が騒めく。
薄く微笑む女優。
『どうかしら?案外、来世は殺し合っていたりするかもしれないわね』
そのセリフが流れた刹那。
臨也の脳をある光景が駆け巡る。
どこか既視感のある映像。
これは、夕方の、
静雄がガードレールを引き抜く。
振り上げながら臨也に襲いかかる。
臨也はそれを避け、反撃にナイフを投げつける。
二人で買い物袋を抱えて歩いた池袋の道の上で。
その道を壊しながら駆けて行く。
お互いの目には、確かな相手への殺意があって、
「……………ねぇ、俺たち、愛し合ってるよね」
声が溢れる。
左手で静雄の服の袖を握り締める。
頭がグラグラする。
焦点が定まらず霞みがかったようなテレビ画面が目に映る。
困惑したような「ああ…」という返事にもう一つ確認する。
「殺し合ってなんか…いない、よね。前世だって、来世だって、」
静雄はその言葉に弾かれたように反応し、そして何かを察したように
「…っ、悪い夢だ」
と返した。
未だ震えることしかできない臨也の手を握り、耳のそばで囁き落とす。
臨也に。自分に。言い聞かせる様に。
「…悪い夢だ」
今のお互いの優しい温もり以外は全部、夢だ。
*
『「前世で殺し合う関係であると、来世で結ばれる」というから、殺し愛の2人は、例え命尽きる瞬間まで互いの命を奪おうと闘志を燃やしていても、来世では優しく惹かれ合って結ばれ、ふとした時に前世の夢を見ては、青い顔で隣にいる相手の手を手繰り寄せ「悪い夢だ」と囁き落されていると思っています』
https://twitter.com/115change/status/547299512260128769
というe子さんの呟きに滾ってシズイザしちゃいました。なんか当初の予定ではシズちゃんがもっとえろかっこよかったのに微妙ですね。残念也。
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