SS的なサムシング
2014-12-08(月)
全体公開
「冬の春の日っていいよな、らしくなくて」とソイツは言った。
全くもって意味不明な発言。らしくないのは良いことなのか?まず冬の春の日ってなんだ?
私はその時「ふーん」とだけ興味なさげに応えた。
ソイツは私の応えなどどうでもいいかのように教室の窓から冬の曇り空をずっと見つめていた。
ソイツが居なくなってからして。
この日は冬だというのに妙に気温が高い不愉快な昼であった。
朝から、およそ冬のものだとは思えないほどギラギラと光線を飛ばしてくる太陽に、久しぶりに首筋を焼かれるという苦行を強いられて私はすこぶる不機嫌だった。太陽は夏仕様なのに大気は冬仕様のままとても澄んでいるので、夏よりも真っ直ぐと熱が届いてくる。従って無駄に体感温度が上がるのだ。
ちょうど給食を食べ終えて眠くなる五限目。カーテンとガラスに遮られ幾分ギラギラ度を削られて、丸くなった日差しを受けながら、窓際の席で頬杖をついた。教師の声も子守唄に聴こえてくる頃、
と、その時。
ぶわあ_っ、と 大きく風が吹いた。
__私は、桜の幻影を見た。
片方ずつ開けた六枚の窓から入って、教室中のものをばたばたと残さずはためかせて廊下の方へ抜けていく風。カーテンは悪戯に暴れまわって教科書のページは飛びまくる。一瞬空気を乱したこの涼しい風を、私は無意識に春一番だと思った。
そんな馬鹿な。12月も初旬、まだまだ冬は長く続くというのに何が春一番か。とそこまで思考を進めたところではっと気がつく。
「冬の春の日っていいよな、らしくなくて」
久しぶりにアイツの声でアイツの言葉を思い出した。
ああ、アイツが言ってたのはこれか。
(確かに、らしくなくていい)
桜の幻影を見た冬の春の日。私はソイツの事をまだ忘れてはいない。
*
久しぶりに何か降りてきたので勢いに任せて書き殴った。空気は冷たいけど日差しは強くて快晴の青天井、な冬の春の日が好きです。春の日より好きです。二人称をソイツとアイツ使ってみたけど微妙にわかりにくくて頭を抱える。
あとから修正入る可能性大てか既に何箇所か直してる。創作です。