サトル と エリカ
2010-05-29(土)
全体公開
授業終了のチャイムが鳴り響くと共にサトルは教室に出る。周りには、下校時特
有の騒がしい空気。やはり、あの異変を感じ取ったのは自分だけだったのか・・・?
いや、感じる、感じないは関係ない。いずれにせよセカイを救うことが出来るの
は自分しか居ない・・・・・・。自分に言い聞かせ、サトルは足早に学校を後にする。
そう、彼女がボクに打ち明けたセカイの真実・・・そしてあの預言書の通りならば、
セカイの終末は、もう、すぐそこに迫っている
ユメを見ている。セカイを覆いつくす闇。青黒く染まる空。奇妙に装飾された
二つの塔・・・・・・全てを支配した魔王によって世界は、カオズの渦に陥る・・・・・・。
差し込む光の眩しさをこらえつつ、目を開けると、そこは病室だった。
あぁ、そうか・・・・・・サトルは思い返す。ダンジョンでの手痛い敗北。自分の持つ
スキル「松明」だけでは、魔の軍勢に勝つことは出来なかった・・・・・・悔しさに震え
るサトルさったが、ふと我に返り顔を上げる。そこには、彼女の姿があった。
特異の感震者は自分だけで無い事には気づいていた。
同じクラスに在籍するサトル。彼と口を訊いた事は数えるほどしか無いが、
しかし、それだけでお互いに共通するレヴンは十分に感じ取ることが出来た。
そして、だからこそ私は、彼にあの預言書の事を打ち明けたのだ。
今、彼のレヴン・・・つまりモチベーションは、非常に高い状態にある。多分。
この期を逃がしてはいけない。私は彼の手を取り、病室を後にした。
サトルを呼ぶ声がする。振り向くと、静かな笑みを浮かべるエリカの姿。
昼休み、屋上。初夏を思わせる風が吹く中に、二人は居た。
サトルはエリカから、新たに預言書を書き込まれたというセカイの終末について
訊かされる。驚くべきことに、預言書は自動書記によって、次々と新たな預言が
記されていくのだと言う。しかし、それ以上にサトルを驚愕させたのは、その
新たな預言の内容だった。セカイの終末は近い・・・サトルは息を呑んだ。
新たに記された預言によれば、私達・・・つまりムフィスの使途の敗北によって、
終末への時間は早まってしまった、という。しかし、不思議と私に焦りは無い。
サトルの救世主としての潜在値はとても高い・・・・・・多分、私が思うように遥かに。
ゾフスの神から授かりし癒しの魔法「ヒール」、新たな力「MPゲット」。
この二つの力に、更に磨きを掛けた私の「ブリザード」があれば・・・・・・今度こそ。
それはエリカの預言書・・・だった。夕刻の体育館裏で、サトルは我が目を疑った。
夕日に照らされる、その漆黒の預言書をいつもエリカはとても大切にしていた。
おそらく何かしらの手違いで落としてしまったのだろう・・・・・・そう思いながら、
サトルはその預言書を拾い上げる。そして、軽い気持ちで・・・・・・ページを捲った。
・・・・・・預言01・・・預言03・・・預言10・・・・・・設定01・・・設定03・・・設定10・・・・・・。
預言書を読み終えたサトルは、これが誰の目にも触れていないことを、祈った。
預言書を失くしてしまった。しかしエリカは、それに慌てる事は、無い。
預言書の内容はほぼ暗記している。それに、あの預言書に私の名前は記されて
いない。もし仮に誰かに拾われたとしても、秘密が外に漏れる事は無いだろう。
むしろ・・・とエリカは思う。これすらも、ゾフスの神の示す道かもしれない。
残念ながら、サトルは救世主では無かった。つまり最後の戦いは、私一人。
預言書も無い。しかし私には新たな力「預言」がある。だから私は・・・負けない。