暇だとろくなことしない
2018-08-06(月)
全体公開
↑を描きながら考えたなんかアレな…何か…
を貼り付けておこう…
恥ずかしくなったら消します。
彼には神様がいた。
神様は彼に羽をくれた。
嫌なことがあっても、神様のことを考えると幸せな気分になれた。
彼は神様を愛していた。
彼は今日も神様に愛をうたう。
へたくそだけど、明日はもっとうまくなるから、どうか聞いて。
うまくできないところは、何度も練習した。
うまくできるまで、何度も何度も練習した。
ある日、彼はふと不安になった。
神様は自分を愛しているのだろうか。
そんなことを思ったのは初めてで、彼は戸惑った。
彼は神様を愛しているけど、神様の気持ちはわからない。
いつしか、彼はうたわなくなった。
神様にもらった羽は、だんだんと薄汚れていった。
だって、どうせ頑張ってもうまくできないのなら、やっても無駄だろう。
羽があっても、飛べるとは限らない。
自慢だった羽が、なんだか邪魔に思えた。
背中にへばりつく惨めな羽が、なくなればいいと。
どうせ飛べやしないのだから。
地面を歩きながら、羽のことなど忘れていた。
一緒にあるく友人もいる。
バカにされたり、ケンカもするけど、彼はもう、うたわない。
友人が、ふいに彼の羽を指さした。
なんだそれ。格好悪いな。おまえには似合わないよ。
肩越しに見た羽はみすぼらしく、友人の言葉どおり、不格好だった。
そんなものを背中にぶら下げている自分が恥ずかしくなった。
いっそ切り取ってしまおうか。
ナイフを突き立てようとして、思いとどまる。
きっと、ナイフを刺したら痛い。痛いのは嫌だ。怖い。
どうすることもできず、彼は無様な羽を背中に貼り付けたまま歩く。
まだそんなものを持っているのか。
友人が彼の羽を指さす。
取れないんだよ。
彼は笑った。本当は泣きたかったけど、笑った。
どうしたら、この羽は消えるのだろう。
ひとりで部屋に戻り、彼は考える。
考えても考えても、羽を消す方法は見つからない。
途方に暮れて、彼はついに泣き出した。
誰も助けてくれなくて、どうしたらいいのかわからない。
こんな気持ちは初めてではない。
ずっと前から知っている。
悲しくて、苦しくて、誰にも届かないとわかっているのに叫びたくなる。
どうせ誰にも届かないのに、彼は叫んだ。
憐れがましく泣きながら、小さな声で彼は叫んだ。
喉の奥からあふれてくる切々とした声は、愛されたいと願う、うただった。
夜空に向けて、彼はうたった。
うたは誰にも届かないけど、羽はふわりとひるがえった。
惨めな灰色の羽は、きらきらと白くかがやいた。
夢中でうたう彼は気づかない。
叫び疲れて眠った彼は、やがて目覚めて知るだろう。
背中の羽がある限り、うたわず生きてはいけないことを。