ヘッドフォンアクター

・・・その日は随分と晴天で、当たりざわりない一日だった。
 すくなくとも、あのラジオが流れ出すまでは。

「・・・非常に残念なことですが、本日地球は終わります。」
どこかの国の大統領は泣きながら言った。

それは余りにも唐突で突飛な出来事で私を非日常へ誘うには余りにも充分すぎる言葉だった。

ノーセーブやりかけてたゲームも、ほぼ手つかずの参考書も投げ出し窓の外を見る。
窓の外は大きな鳥達が多い尽くしてく。 空が渋滞中とはシュールな光景だ。三日月を飲み込んでどこかへ向かっていく。
震える身体をいなすようにすぐに私はヘッドフォンをした。

ミュージックプレイヤーの電源をいれた瞬間、不明なアーティスト項目の不明なタイトルナンバーがミュージックプレイヤーの画面に走る。
ヘッドフォンからノイズ音が入り交じった声が途端に耳元に流れ出した。
「ねぇ、キミ、生き残りたいでしょう?」
いきのこる・・・?「うん、私は生き残りたい」
「じゃあ、私の言うことを聞いて。外へ出て、すぐ右へ」
蠢き出す世界会場を、波打つように揺れる摩天楼。
この五月蝿すぎるこの世界は私が居るべき世界ではない。
「そう、そしたらしばらく直進、次の信号を右へ。」
紛れもないこの声はどう聞いても、聞き飽きた自分の声だ。
「ねぇ、キミは見える?あの丘が。あの丘を超えたら20秒で、嫌でもその意味を知ることになる。私の声と君の声が同じ理由。」
「キミが放っている言葉の意味が私にはわからないよ。」
「そう、じゃあ、疑わないで、耳を済まして、あの丘の向こうへ、20秒先へいこう。」

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