___青峰が、立っていた。
「ごめん、なさい。」
青峰は、ぺこりと頭を下げる。
そして、逃げた。
「おい___!?」
どうして逃げるんだ?
追いかけようとすると、三芳に止められる。
「今は、私の話してるんだよ……!」
それもそうだった。ここで勝手に出て行くのは失礼だ。
「……悪い、三芳とは、付き合えない。」
そう答えて、青峰を追いかける。
「ちょ…………!」
青峰は謝るようなこと、してないじゃないか。
*
少し走って、青峰の姿が見えた。
「青峰!!!」
走り続けようとする青峰の腕を掴んで、止める。
「…………何」
青峰は実に不機嫌そうな顔を向けてくる。
「いや、えっと……どうかしたのか?
」
「別に」
「じゃあ、謝る必要ないじゃないか」
「…………告白、されてたんでしょう?なら、三芳さんに失礼、だった」
ああ……そういうことか。
青峰は、他人の告白を勝手に聞いてしまったと思っているのか。
「大丈夫だよ、あいつはそんなこと気にしないから」
そういうと、青峰はほっとした顔になる。
「……そう」
三芳の機嫌を損ねてしまったとおもったから、逃げたのか?
……そういえば青峰は、「高嶺の花」であったと思いだす。
人が自分に近づかないのは、嫌われているからとでも思っているのだろうか。
「…………あの本、読んだ?」
「えっ?…………あ、うん、ちょっと」
「そう」
「そういえばあの本の女の子って、青峰に似てるよな」
そういうと、青峰は相変わらずの無表情を、真っ赤にさせる。
ついにはうつむいてしまった。
えっ?
しかしそのあとすぐに、悲しそうな雰囲気を漂わせる。
ていうか、結構わかりやすいんだな、青峰って。
「…………」
こくり、と青峰はうなずく。
「…………あの話は、私たちの、話。」
私、たち?
「…………私を笑顔にさせてくれた、お話。」
「えっ」
青峰が、笑顔に?
なんだそれ、すっげえレアじゃん。
「私の、大事な人が書いてくれた、話。」
そんな言葉と裏腹に、青峰の顔は、暗く、沈んでいた―――――――。
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