「み〜〜〜〜〜〜っ」  圭一が部室に足を運ぶと、入口の前で梨花が座り込んで泣いていた。
 「ど、どうしたんだよ、梨花ちゃん?」
 慌てて近寄ると、梨花ちゃんは濡れた瞳で圭一を見つめる。
 「魅ぃがいじわるしたのです、み〜〜〜〜〜〜っ」
 (な、なんだと魅音の奴!!!!!!
 こんないたいけな幼女……もとい梨花にいじわるするなんて、うらやまs……罰あたりもいいところだ!!
 ていうかぶっちゃけ羨ましい!!!!)
 私怨やらなんやらをまぜこぜにした感情を胸に、魅音を退治すべく圭一は思いっきり部室のドアを開けた!
 ……視界の端で梨花の口角がわずかに上がったことに気だついたが、遅かった。  しまった!!!
 部室に半歩足を踏み入れた圭一の頭には、何やら柔らかいものがボスっと音を立てて落ちてきた。
 頭上がやけに煙たい。
 それだけなら良かった
 その後連鎖的にたらいが落ちてきた。まだ何かあるのかと上を向いたら、下がっていたバケツがひっくりかえって水が降ってくるという始末。
 落下攻めかよ、今日は。
 なるほどな、黒板消しのとラップなんて普通すぐにばれてしまう。そこで奴は梨花に注目させて気付かれずにトラップを発動させたのだ。
 幼女の前では盲目か前原圭一ッ!!!!!!!
 なんてことだ……。
 当然部室に魅音の姿はなく、椅子にすわってにやにやと笑う沙都子だけが圭一の瞳には映った。
 「こっの沙都子おおおおおおおおお!!」
 さと子に襲いかかると、沙都子はにやりと笑う。
 「レナーっ!助けて下さいまし!!!」
 「なっ……!!!!」
 さと子の叫びにレナが飛んで来ないはずがない。つまりこいつは、さらに圭一を痛い目に合わせようとしているのだ。
 --先手必勝。
 かつて魅音が言っていた(気がする)。しかしまあ、言っていなかったとしても、勝つ(というか負けない)ためにはどんな手段でも使っていいと。
 負けなきゃいい。
 つまり、巻き添えというやつだ。
 どうせやられるなら、道連れにしてやる。
 案の定、レナは颯爽と現れた。
 「沙都子ちゃん!?どうしたのかな!?かな!?」
 圭一は沙都子よりはやくレナに話しかけた。
 「聞いてくれレナ、沙都子のやつが俺にレナをどう思ってるか聞いてくるんだ!」
 「はうっ!?」
 「はあっ!?」
 レナが顔を赤くするのと、沙都子があっけにとられた顔をしたのは同時だった。
 「だから俺は、レナを愛してるって言ってやったぜ」
 「はうっ!?……け、けいいちくんっ……!?」
 レナの赤面がどんどんと色を増していく。
 「レナ、お前はどう思ってる?沙都子と俺のためにも言っぐはっ!!!!」
 「きゃっ!?」
 閃光のような何かが下りてきて、圭一と沙都子は大の字で寝そべる。
 (ふっ……沙都子ざまあみろ……!)
 「いた……」
 沙都子は涙めになって頭を押さえていた。
 「け、けいいちくんもさとこちゃんも、そういうのはだめだよ〜、はう〜」
 レナは相変わらず赤かった。
 扉の前に梨花が立っている。
 (……なんか、梨花ちゃんがなくとろくなことがないな……はあ……)
 これからは少し、梨花にも自分にも厳しくしようと思った圭一だった。





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