――アヤカシ狩り――
それを職業にする人は、この世に少なくない。
日本国。この世界には、「アヤカシ」と「狩人」が存在した。
人々を脅かすアヤカシを狩ることで、金儲けをする人たち。
私も、そうだ。
耳障りな高い声が聞こえる。アヤカシのものだ。
(雑魚ね……)
数匹程度なら余裕で相手にできる実力を持っていた私は、たとえそれが見たことのない種類のものであっても、斬りかかった。
「待て、郁ッ!!!!!」
その声に、私は立ち止った。
「え……?」
声の主を確認したくて、振り返る。
「伏せろ!!!」
切迫とした声で叫ばれ、慌てて私は云われたとおりにしゃがむ。
風が横を通った気がした。直後、ざっ、と切り裂く音。それは幾度となく響く。
「洸……?」
状況を理解したくて、そこにいるはずの男の名前を呼ぶ。なんで私、しゃがまないとだったの?……なんであのアヤカシは、真っ直ぐ私に向かってきたの?
目を上げた瞬間、すさまじい光景が広がっていた。
さっき私が切ろうとしていた一匹だけでない。他にも、見たことないものや、すごく強いといわれるものまで。
「――っ……」
何、それ……
立ち上がって、さっき私を止めた男の前に行く。
「無事だったか?」男は云った。
「……何、コレ」
かみ合っていないことはわかっていながら、私は問いかけた。男は頭を横に振って、
「……さあ?俺にもさっぱりだ。ただ1つ、分かっている事は……」
男――妖討隊隊長・市之瀬 洸は、私に目線を向けたままで
「……お前の命は、アヤカシに狙われている。らしい。」
「……はあ?」
ただ、淡々と、そう言ったのだった。
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