外国の血が流れる証である金の髪にぱっちりとした瞳。日本人離れした外見の少女を、周りはビスクドール≠ニ呼んだ。
瀬戸ヶ丘のビスクドール・青峰レーナ。彼女は、高嶺の花として扱われていた。そんな彼女に親しいものなどいなく、友人すらいなかった。常に一人で、無表情をつらぬいていた。
だからかな、少し興味が湧いてしまった。
「ねえ青峰さん、オレと付き合わない?」
返事はなかった。代わりに、他の女子の焦ったような声が聞こえる。
「ちょ、なにいってんの??」「そだよー彼女ほしいなら私とつきあおうよー」「なんで青峰さんなの??」
「いや、これ真面目に。」
女子たちが唖然とした顔で俺を見る。
「……失せて」
今まで一度も開かれなかった口から出たのは、予想もしていなかった言葉だった。
「え、今、なんて……?」
「失せて」
「はあ?あんた何調子のってんの?」「意味わかんない、ビッチ!!」「悠にこくられたからって何様のつもり!?」「お高くとまってんじゃねーよ!」
バンッと音をたてて、青峰は読んでいた本を閉じる。
「……本、読ませてくれる」
彼女の凍てついたかのような冷たい瞳に、その場にいた全員は背筋を凍らせた。
「そ、そっか、読書の邪魔してごめんな」
謝ると、彼女は何も言わず本を開き、続きを読み始めた。
「……なあ、その本、面白いの?」
「……」
「なあ、おいってば」
「……」
「おい、聞こえてんだろ、なーなー」
顔面に衝撃が走った。
開いた目にかすかに映る茶色と黒。
茶色は本のカバーで、黒はタイトルの文字の色だった。
それがオレの顔面に張り付いている。
つまり青峰は本をオレに投げたのだ。
「……今後私と会話がしたいのなら、その本を全部読んできて。それすらできないなら、二度と近寄らないで。」
そう告げると彼女は席をたちクラスを出ていく。
顔から落ちた本を拾い、タイトルを見てみる。
__『ビスクドールは微笑んだ』
そうしてオレは、笑わないビスクドールの投げたこの本を読み始めるのだった。
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