君のマフラー


 土手を一人で歩く。
 
 サク、サク、と、霜を踏む音が鳴る。

 バイト帰りで、もうすぐ日が変わる。

「はぁ…………さみぃ」

 冷たくなった手に息をかける。
 
 一瞬暖かくなるものも、そんなのでは、冬の寒さには勝てなかった。

 ザッ、タッタッタ、ザッ、タッタッタ。

 そのへんにあった石を蹴りながら足を進める。

 早く、帰りてえ。

 なんて考えていると、前から足音が聞こえた。

 顔を上げると、一つの影が、こちらに向かって走ってきていた。

 あれは……


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君のマフラー
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