窓の外は、べっとりとした灰色の空を映し出している。
何故だろうか、この空は美しい。
いつもの曇り空なのに。
何故だろう。
あぁ、そうか、太陽が見えないからだ。
そんなことを、ぼんやりと考えながら、俺は視線を液晶画面へと落とした。
何もやる気が起きない時間が続いている。
もう随分と長い時間がたった気もするが、思い返してみると一瞬だったような気もする。
ただ、目の前には途方もないほど膨大な、怠惰で節操のない時間が立ちふさがっている感覚だけがある。
それだけはまぎれもない事実。
薄暗い、明かりの消えた部屋。
俺はただ静かに、パソコンの前で溜息をついた。
モニタは砂嵐を映し出している。
ネットで拾った素材映像だ。
何故そんなものを見ていたのだろうか。
何故?
何故だったかも思い出せないのかもしれないのかもしれない。
ただ、意味も、情緒も、感情もへったくれもないこのノイズだけが、今の俺の心を洗い流してくれたのだ。
黒、白、黒、黒、白、黒、白、白。
理由などどうだっていい。
自分を掻き消してくれる、無意味な信号の渦。
何もない、何も残されていない、何も与えず、何も奪わない雑音。
戯れでも構わない。ただこの情報の海に漂っていたい。
それが俺の唯一の望み。
すでに生きることを放棄した、肉人形の唯一の願望だった。
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