俺たちは学校の帰りに裕也の怖い話を聞いていた。
「その本を、夕焼け小焼けの音楽が鳴っているときに開くと、作者が創り出した「欲望の世界」に引きずり込まれるんだ。
ちなみに、作者が死んだことは確認されていないし、遺体も無い。作者はこの欲望の世界にいると考えられているそうだ。」
裕也はまた得意げにメガネのブリッチを押し上げた。これをするときの裕也の話は本当にあった話、つまりノンフィクションの話なのだ。俺は信じたくないが。
「何で夕焼け小焼けなんだよ。」
俺が裕也に尋ねると、裕也はコホン・・・。と咳払いをして口を開いた。
「ほら、よくあるだろう?カゴメの歌の話とかさ。カゴメって言うのは、かごの中の女って意味なんだ。その女がお寺に閉じ込められている。そのお寺の前には、鶴と亀と形をした石があって夜明けになると世の二つのカゲが重なり、お寺の扉が開く。しかし、出ようとすると、後ろの正面に鬼がいて殺されてしまうって言う・・・。まあ、そういった怖い話と関係があるらしい。」
「ひぃぃぃぃ・・・・。」
「恵麻ってば、怖がりね。実はその欲望の晩餐って本、家にあるの。明日やってみましょ。どうせ嘘なんだから。」
杏奈はニヤリと笑みを浮かべた。
「お!いいな。俺は参加する。」
「俺もだ。話したのは俺だしな。」
「みっ、皆さんがやるなら私もやります・・・。」
そんなこんなで俺たちは明日、夕焼け小焼けのチャイムが鳴る6時に校庭に集まることになった。(一人ひとり、部活が違うからな。)
このときはまだ、大変なことになるなんて考えてもいなかった。
ただの、遊びだと思ってたのに・・・・。
次へ


やめる