流星とパニシュメンター 1


「おい、今何処にいるんだ?件の話なんだが」

「……あー……?」

「アンタ……また飲んでるのか?」

「あー……千ヶ崎か。」

「チッ……その様子じゃあ仕事の話は無理だな……まぁいい、後で落ち合おう。場所はメールで伝えておく。」

「……あぁ……。」


もう耐えられない、とばかりに千ヶ崎は電話を切った。


軽い舌打ちを鳴らしながら、携帯を鞄の中にするりと落とすと、千ヶ崎は立ちあがって辺りの様子をうかがった。

人の気配は無い。まぁ別に聴かれていたとしても支障は無い。この程度の情報の漏洩は、漏れたうちにすら入らない。
とはいえ規則がある、聴かれたら売られる前に始末しなければならないが……。


「…………早くもお先真っ暗だ。」


独り言を呟いて、小道を抜ける方向に足を進める千ヶ崎。

背後で物音がした。



「……おや、居たのか。」


千ヶ崎が書類の詰まった肩掛け鞄の中に手を突っ込む。と、同時に靴底が地面にこすれる音がした。


そしてその刹那、押し殺した強振と呻き声が路地の暗がりに沈んだ。



「……やれやれ、下っ端は苦労する……。」


右手に握りしめた拳銃をまた鞄のなかにしまいこんで、吐きだされた薬莢を拾う。マグナム弾の薬莢は珍しい故に足が付きやすい。

路地の暗がりの方へと足を進めると、質素というよりか、いささかみすぼらしいというほうが似合う格好をした、ホームレスと思しき男がうずくまっていた。
仕事にもつかず、闇情報を求めて路地に潜む奴らは、まさにごまんと居る。

その一人を今、射殺した。まるで、蜜に集まる蟻を踏みつぶすように。


千ヶ崎は少しの憂鬱に襲われて空を仰いだ。


空は黒く、一筋の光もない。

月さえも高いビルと都会の華やかな明かりに隠されている。この小道は果てしなく窮屈だった。

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