愛を、ください。2


公園にあった大きな木が好きだった。

子供のころに、お母さんから「今生きている唯一の本物の木だよ」と教えてもらった。
本物の木が、不思議な力のようなものをもっていることは
前世紀の文献で知っていた。
そこには、「木が話しかけてくれた」とか、「木をみていてとても癒された」
などと書いてあった。
だから、私にとって生きている木は特別だった。

友達のように、毎日その木に通っていた。
ある日は、お母さんに怒られたことを愚痴ったり、
お父さんにほめられたことを話したり。
そのたびに、その木が一緒の気持ちになっていて、
私を優しく包んでいてくれる気がしていた。

友達ができたとき、
友達と喧嘩したとき、
これからの未来について、
いままでの過去について。

いろんなことをその木に話した。
ついこの前まで。

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