RAIMU
雨足が強くなってきた……どうやら、嵐が近付いているらしい。
あぁ、どうしようか、この傷ついた体はもう重たくて言うことをきかない。
息だけが荒くなる。
もう思考も有耶無耶だ。
「……死にたくない……。」
呟いた瞬間、血の味が口いっぱいに広がる。鉄の臭い……。
水たまりが、淡く赤に染まっていくのが見える。
気付くと、猛々しい物音が地面を伝って水面を揺らしていた。
蹄が土を蹴りあげる音が、だんだん近づいてきている。
奴らか……?
もう、どうでもいいかな。どうせ死ぬんだし。
痛い、体中が痛い。
父さんは死ぬ寸前に、私に向かって「楽になってきた」と言っていた。
でも、痛い。
ずっと痛い。
身体中を駆け巡るとも、突き刺すとも、ひねり上げるともつかない痛みが、胸の内を支配している。
死ぬほど、痛い。
でももう涙も出ない。
痛みで泣けるような女の子になることを、私は許されなかった。
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RAIMU
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