俺がアイツを目にしたのは、高校の入学式だった。
正確には、入学式の始まる前、
クラス分けにしたがって入ったクラスの中で、だ。
そいつは、長い黒髪を二つに結んで、
口を真一文字にして、
無表情で、
黙って、
カバーのかかった本を読んでいた。
クラスの中には数人のクラスメート。
それぞれが元の中学が同じなのか、
それともすでに仲良くなったのか、
仲良く話をしていた。
そんななかでアイツは、一人で。
クラスの一番窓際、一番後ろの席。

そこに、風景のように座っていた。


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