プロローグ
古より伝わる、御伽噺

『昔、昔。
 この世界の生まれたその理由
 ある、一人の少女がありました
 少女はいつも一人きり
 少女に罪はありません
 しかし、少女はなぜか、
 そう、
 本当に何故か、人々から
 忌み嫌われていたのです
 
 少女はいつも一人でした
 少女は、自分の世界にこもります
 その世界は、5人の王が、
 5つの国を治めていました
 そう、この世界です
 しかし、まだこの世界ではありません
 その世界は、少女の妄想の中のものです
 
 その世界の中で、少女は楽しく暮らします
 でも、その世界でも、少女はなぜか
 嫌われてしまうのです
 昨日まで楽しかった世界が、
 牙をむくかのように
 彼女を、排除しようとしました
 
 世界は、少女が、他の住人と対等に扱うのが
 なぜかおかしいことのように感じたのでした
 
 その世界の5つの国の、スターの国の王は、
 他の4つの国の王に相談を持ちかけます
 スターの国の黒き王はいいます
 「彼女の扱いは、どうすれば良いのかわからない」
 ハートの国の王はいいました
 「なら、“特別”として扱えばいい」
 彼女は、いつもスターの国にいました
 たまに、スペードやクローバー、ダイヤの国にも行っていましたが
 ハートの国には来ませんでした
 「あなたはわかっていませんねぇ」
 と、スペードの国の王は言います
 「でも、“特別”には賛成・・・」
 クローバーの国の女王は言います
 「この世界を作り出したんだから、“特別”で正解だと思うよ」
 ダイヤの国の王は言います
 「そうだ、じゃあ、作り出した“創造主”でいいんじゃないか」

 少女は、“創造主”です
 創造主は、特別です
 それなら、今まで思っていたことのもやもやがすべてはっきりします
 だって少女は、

 この国を作った“母”なのですから


 少女、アリスは
 この国の“母”と、ようやく世界に認められました
 そしてそのことに気づいた世界は、もう少女の妄想ではなくなるのでした』


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