私は、家族よりも1日早くおばあの家に来た。

「……おばあーーっ!!私だよ!!」

 叫ぶと、玄関の引き戸が、カラリと音を立てて開いた。
 1年前よりも、遙かに小さくなったおばあがいた。
 昔は私の方が小さかったのに、今ではおばあの方が小さい。

「あらあら……久しぶりねぇ」

 おばあと一緒に家の中に入ると、そこは、まるでこの一年、放置されていたのかのように、埃などで薄汚くなった空間があった。

「おばあ!……掃除、してる?」

「んにゃぁ、してないねぇ。何しろ、老人一人じゃァ大変だもの」

 それはその通りだ。
 おばあ一人でこの無駄に広い日本家屋の掃除だなんて、ギックリ腰にでもなってしまう。

「……私、今日、この家掃除するよ」

「あら、そうかい?ありがとうねぇ」

「うん。おばあは縁側かなんかでゆっくりしてて」

 私は掃除用具入れに向かい、雑巾と箒、バケツとモップなんかを持ってくる。
 まずはどこからにしよう。なんて思っても、何処からやっても同じだと思わざるを得ない汚れ具合だった。
 見ただけでやる気が喪失される。
 ……けど仕方ない。
 言ったからにはやるしかないのだろう。





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