『    〜一番目〜


 ある森の近くに、彼女は住んでいました。

 彼女は赤色がとても好きで、彼女の周りのものはすべて赤でした。

 ある日、彼女は気づきます。

 「あら、染料がなくなってる・・・・・」

 赤色の使いすぎで、赤の染料が一滴もなくなっていたのです。

 染料を買う場所までは、一時間もかかります。
 
 今すぐに、染めたいものがあるのに・・・・。

 彼女は、彼女の周りに、赤ではないものがあるのは許せません。

 彼女の髪の毛は赤ではありません。何度も染めようとしましたが、どうしても染まりませんでした。

 なので、彼女の家には鏡がひとつもありません。

 赤ではないものが目に入るのはいやです。

 空も赤く染まってしまえばいい、というのが彼女の座右の銘です。

 
 「ああ、そうだ。」

 赤色はすぐそばにあります。

 ・・・・・自分の、カラダの中に。』


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