無題
2007-07-28(土)
全体公開
雨の魔女。
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張り込みを始めて3日目。
それは夜に起こった。
「キャーッ!!!」
悲鳴が響く。
ウィルとアリサは、すぐに現場に駆けつけた。
「大丈夫ですか!?」
ウィルが被害者の女性に聞く。
「ま、まだ追ってくる・・・。何とか最初の呪いは避けたけど・・・。」
「ウィル、その人連れて安全なところに隠れてて。」
アリサは杖を取り出して構える。
「待ってよぉ。僕はまだ満足してないよぉ?」
ちょっと気持ち悪い男が現れた。
「こんばんは、呪い魔さん。」
「うん。こんばんは〜。」
「何でこんなことしてるんですか?」
「最初はね、ストレス解消に、イタズラ半分だったのぉ。でもね、どんどんすごい呪いを覚えて、それを試すようになったんだぁ〜。」
「だから・・・。目潰しの呪いや、狂える呪い、踊りの呪い、歌の呪い。忘却の呪いまでかけたっていうの?」
「そうだねぇ。面白かったよぉ?人が逃げて泣き叫ぶのはさぁ。」
「狂ってる・・・。」
アリサは杖を男の前に向ける。
「いいのぉ?攻撃できるのぉ?」
「なめないでよ。」
アリサは少し微笑むと、詠唱を始めた。
「風よ、我のために千の刃となりて、切り刻め。・・・風魔法、かまいたち!」
風が荒れ、刃になって襲い掛かる。
「うっ・・・うわぁ!!」
風がやんだ時、男は傷だらけで倒れていた。
「アリサ。」
「何、ウィル。」
「・・・さすがに詠唱は無しなんじゃないの?」
「いいじゃない。どうせ反省してなさそうだし。」
「・・・詠唱ありの黒魔法は強力だから、詠唱無しでも十分だったと思うよ?」
「でもね、」
「ふっ、ふふふ・・・。」
男が起き上がった。そして、ウィルに向けて。
「その者、雨のときに魔力の恩恵を受け、それ以外は魔力を失う・・・。雨の呪い!」
杖先から閃光が走る。
「危ない!」
アリサは、ウィルをかばい呪いの閃光を受けた。
「う゛っ・・・。」
アリサがふらっと倒れた。
「あは・・・あははははは!!」
男が狂ったように笑う。
が、その笑いは
「あは?」
ウィルから放たれた禍々しい殺気によって静まった。
「何?お前。」
「お前は僕の大切な人を傷つけた・・・。」
低く呻くウィルは、普段とは打って変わって恐怖を感じる。
そして、ウィルは詠唱を始めた。
「この地に眠る水龍よ、われの声に応えたまえ・・・。」
国の中心にある泉が輝く。
「エルフの名の下、命ずる。こいつを・・・倒せ。」
そして、水龍が現れ、男を飲み込んだ。
男は完全に気絶した。
「ありがとう」
とウィルが礼を言うと、
「まあ、そう言うな。われもこやつは許せなかった。むしろ、呼び覚ましてくれ、感謝する。」
龍はそういい、再び泉へと還った。
「そっか・・・。エルフ族は自然の力を操る魔法が得意だからね・・・。いくらハーフでもその力はあるんだ・・・。」
「・・・大丈夫?すぐ病院に行こう。」
「うん・・・。風魔法・・・ウィンディ!」
何も起こらない。
「・・・あれ?」
「・・・まさか・・・。さっきの呪いは・・・。雨のときしか魔法が使えないってやつじゃ・・・。」
「うわっ、厄介なのにかかっちゃったな。」
その後。
「たいした怪我じゃなくて良かったですね。警察の方が来ておりますよ。」
「あの、呪いは・・・?」
「・・・すいません、我々じゃ・・・。」
「・・・そうですか・・・。」
「ありがとうございます!こちら、賞金となります。」
「いえいえ。」
「僕らだって許せなかったんですよ」
男は、無期懲役となった。
国を出て、アリサは。
「さて、雨が降るのを待つか。」
「どうして?」
「私の親友に、凄腕の白魔導士がいるからさ。」
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ちょっとした解説。
詠唱とは呪文の前文みたいなもの。
別に唱えなくても発動はするが、詠唱をしたときと比べて威力が落ちてしまう。
狂える呪い
精神を狂わせる呪い
踊りの呪い
踊り続ける呪い
歌の呪い
歌い続ける呪い
似たようなので歌声の呪いもあるが、それは幻聴が聴こえる呪い。
忘却の呪い
記憶喪失にする呪い
以上解説でした。