狼と悪魔(小説)
2016-07-11(月)
全体公開
少年はまるで狂ったように生い茂った生温い 森林を走り駆ける
突然 足を地面に這われた木の根っこに取られてしまう 悲しいくもあり悔しくもあった 膝から血が出ても 少年は走り続けた
*
狼とは気高い狩りの猛者だ とても無慈悲で残酷だ その鋭い眼を光らせれば羊はぺろりと食べられてしまう
そして ここに人間に憧れを持つ狼が居た 彼は名前などない
彼は狼の中でもとても優秀だった 獲物が逃げることなどなく 飢えに苦しむ必要などなかった
微かに赤色に近い漆黒の体毛は 彼の戦歴を高く高く表すようだった
そんな彼は人間に出会う 人間の怯えた瞳は狼を捉えず ただの化け物を見る様だった
彼は人間を狩った時に思う 人間になりたい と
彼は険しい山々を登り 恐ろしい契約を交わすことを心に決めた
悪魔に魂を売るのだ
悪魔に魂を売るなど本来は死ぬより恐ろしいことだ どんなリスクがあるかも分からないのだー
続く