舶来品時は江戸。 城の大広間に大名と御用商人が向かい合って正座をしていた。 「ほほう、これが珈琲というものであるか。どす黒い色をしているが、毒ではあるまいな?」 「ははっ。南蛮商人からは黒豆を炒って水に溶いたものであると聞いております。   滋養に優れた飲み物であり、体の毒になることはないかと」 「ふむ。まぁ、物は試しだ。怪しげな香りがするが、少し飲んでみよう」 大名、恐る恐るコーヒーをすすり、すぐさまブッと吐き出す。 「ゲホッ…、苦……ゴッホゴホ、苦い!何だ、このとてつもなく苦い飲料は。   我は好んで苦い風味のものを飲む西洋人の頭が信じられぬ!」 「おっ、お口に合わなかったようで申し訳ございません!」 「えぇい!口直しじゃ。茶だ、茶でも持って来んかい!」 |