十二階のベランダに手を掛ける。
ベランダから下を見下ろすのは趣味。
いや、現実逃避。
ここから空気に身を任せて飛んだら、
あの雲はどんな顔をするだろうか。
あの鳩はどう鳴くだろうか。
あの公園にいる子供たちはどう反応するだろうか。
いつもと変わらなく動き、進むだろう。
私が、コンクリートと体を同化さしていくだけ。
シュールなコメディ映画の様な絵面。
いっそ私を嘲笑うだろうか。
誰も気にしないで、勝手に消滅したと言われていく都合よい現実。
さあ、いっそのこと、この身を自由にするか。
...
...
...
自然の法則に基づいて動く雲。
旋律を刻む鳥。
友達と遊ぶ子供。
グシャっと身が潰れて内臓が露わになる。
唯一残ったお気に入りの白いワンピースに血が滲む。
誰も気にしない。
終わり
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