続・少年とネコ


〜前回のあらすじ〜

自分の代わりにお仕置きを受けてるトラを探しにきたら誰か近づいてきてやばい

〜前回のあらすじ終わり〜






「ど、どうしよう!」
この部屋には隠れる場所がありません。
このままでは見つかってしまいます。
「S…俺に…考えが…ある…」
そう言って、トラは部屋の隅を指差します。
そこにはお仕置きに使われる道具がたくさん立てかけられていました。
「どれでもいい…あそこにある物を…持って…扉の…右側に立つんだ…」
「え、まさか」
「その…まさかだ…入ってきたら躊躇わず…一発ぶちかましてやれ…」
ニヤッ、と笑いながら話すトラ。
「むむむ無理だって!ぼくそんな力ないし!やり返されちゃうよ!」
「大丈夫だ…別に殺せ、なんて言ってるわけじゃない…しばらく気絶させられればいいんだ…」
「でも…」
「どうせ、逃げ出すんだから気にするな…お前ならやれる…」
昼間の時のように、トラは少年Sの頭を撫でます。
少年Sは少しの間考えて、わかった、と返事をして道具を手に取ります。
持ち手が少し遅くなった木製の棒(現代ではバットと呼ばれてる物)です。
それを持って少年Sは、言われた通り扉の右側に立ちます。
少年Sは今までにないくらい緊張しています。
自分の鼓動が聞こえてくるんじゃないか、というくらいドキドキしていました。
足音は一歩一歩近づいてきています。
そして、足音が一番大きく聞こえた次の瞬間

ガチャ

と扉の開く音が。
すると、扉は少年Sを隠すように開きます。
少年Sは手に持った棒を構えると、大きく振りかぶって、入ってきた見回り目掛けて振り下ろします。
ゴッ、という鈍い音と一緒に「グエッ」と言いながら見回りが倒れました。
少し後を置いて少年Sはその場に座り込みます。
緊張が解けて、腰が抜けてしまったのでした。
「うまくいったな…」
「し、死んでないよね…?」
「これくらいじゃ死なないだろ(たぶんな)」
そう言いながらトラは、痛む体を起こします。
「さて、こいつが起きる前に逃げるか」
「う、うん」
落ち着いた少年Sは立ち上がり、トラに肩を貸します。
「ところで、お前どうやってここまで来たんだ?」
「えっと…見回りの死角をついて城壁越えて…」
「忍者か何かなのかお前は…」
へへへ、と照れる少年S。
褒めてねぇんだよな…とトラが呆れます。
「しかし…この状態じゃ壁は越えられそうにねぇな…」
さっきよりはマシにはなりましたが、トラの体は軽い運動をするのも辛い状態でした。
少し考えて少年Sは、はっと何か閃いきました。
「僕がトラを背負って登ればいいんじゃないかな!トラ軽いし」
「いくら俺が軽くてもあの城壁越えるのは流石に厳しいと思うぞ」
さらっと登ってきた少年Sですが、城壁は一般人では普通に登れるような高さではありません。
「どちらにせよ、ここに長居はできねえ…まずは外にでて身を隠した方がいいな」


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