道内ブラックアウト~水汲みの巻~

余震に悩まされながらも気が付いたら昼近くになっていてトイレに行く為に起き、無意識レベルで僅かな希望を込めて灯りのスイッチを押してみたが案の定まだ点かなかった。

水もマンションの上階なので停電中は地下に貯水槽がある為モーターが作動しないとポンプで組み上げられず、ほぼ断水状態に陥り当然トイレも台所も洗面所も風呂場の蛇口を捻ってみるも浴槽に一滴の水すら貯める事は不可能だった。

特に問題なのは冷蔵庫なのだが幸いウチは常日頃から親父殿が万が一の時に備えて冷凍室に飲み終わって綺麗に洗浄し水道水を入れたペットボトルを数本入れて凍らせといてくれてたので、それを冷蔵室や野菜室の上段に置く事でその冷気でもって冷やし続ける事ができ結果的に食品廃棄ゼロという地味に素晴らしい成果をあげる事に成功した。

当然の事ながら上の冷蔵室にも飲み水用の500㍉ペットボトル数本と下の野菜室にトイレ用の2リットルのペットボトル数本ずつ入れてあり、午前中はなんとかそれらで凌ぎきる事ができたが思いの外飲み水よりも圧倒的にトイレ用のほうが大量に消費してしまい仕方なく2リットルのペットボトル1人2本ずつ大きめのバックに入れて母親を留守番に残して親父殿と一緒に近所の神社に湧き水を汲みに行く事にした。

外に出てみると近所のスーパーは停電の為に臨時休業していたのだが、すぐ近くの交差点にある〝オレンジ色のコンビニ〟は店内が真っ暗ながらも自動ドア全開にしてやっていて驚いた。

それは主に北海道を中心として展開している『セイコーマート』(略称セイコマまたはセコマ)という地方密着型のコンビニエンスストアで、特に道東や道北等で過疎化が進んで買い物難民が増えてる地域では生命線にもなっている重要な生活拠点でもある。

ここではなるべく道内で仕入れた食材を使い出来る限り輸送費等のコストを削る事で低価格でありながらも美味しさを損なわないよう工夫を施しており、中でも店内で弁当やおにぎり等を調理し作りたてを提供する〝ホットシェフ〟はかなりの支持者を得ておりもちろん自分も勤めていた頃は大変お世話になっていたリピーターの一人である。

これは後から分かった事だがなんでもセイコマの社長さんが東日本大震災のおりにその凄惨な有り様を観て危機感を抱き、非常時でも販売可能なように電気自動車をレジに直結させ簡易的な電源車がわりに出来るようする為にわざわざセイコマ専用のオイルタンク設備まである給油所を建設してたらしくこれぞ真の意識高い系というか用意周到としか言えない。
(たぶん元々ガソリンスタンドすら撤退してしまった過疎地域では灯油も販売してたから思い付いたのかも?)

・・・気が付いたら話が思いっきりズレてしまったのでここらで閑話休題w

そのセイコーマートを横目に信号の付いてない横断歩道をいつもよりも慎重に通り過ぎて神社の境内へ、湧き水の場所は道路よりもさらに下の方へ降りていくので石で整備されてるが土混じりの階段を足元に注意しながら鎮守の森の中へと進んでいく。

途中そこらじゅう池の周りを囲むように龍神や蛇神等のいわゆる水神系の神々が奉られてる祠の数々をいつもはキチンとお賽銭していたが、今回ばかり華麗にスルーして鎮守の森の奥に行くとすでに何名か地元の人達が各々ポリタンクや水筒等を持って汲みに来ていた。

どうやらその人達もマンション組らしく断水状態なので仕方なく公園の飲み水場に行くとすでに行列になってたらしく、台風一過でピーカンの中並ぶのは厳しいと思いそれならと日陰もあって涼しいここへと久し振りに訪れたらしい。

確かに9月の北海道は内地=本州よりも格段に湿度も低くなってるのだが最近はまだまだ私らにとっては夏の日差しのような照りつける厳しい暑さで、基本的に道内ではストーブを常備しててもクーラーは無い家庭が一般的だったハズだが記録的猛暑になる回数が増えるにつれ徐々に取り付けてもらう家がジワジワ増えてるらしい程には気候が変わってると感じられる。
(それでもたぶん道外の人からは「でも夜は気温下がるんだから全然過ごしやすいじゃんか!」って言われそうww)

だがここに限って言えば道路よりもかなり低地ありしかも高くて立派な木々が生い茂っている鎮守の森の奥地になるので木漏れ日があちこちから降り注いでいるものの、ちょうど強い日差しが遮られているので涼しいどころか夏でも冷たい湧き水が湧いてる箇所はむしろ肌寒いぐらいで非常に快適だった。

そんなに人数も少なかったので思ったよりも水汲み作業はあっという間に終わるが帰り道は逆に計4リットルを抱えて階段を上がっていかなければならず、それから日が沈んで辺りが暗くなるまで何度も往復せざるをえなかったので運動不足の身には地味に応えた。

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