全道ブラックアウト~地震発生前後~

まさかあんな事が現実に起こるなんて・・・それこそ二次元の創作アニメや漫画やゲームや映画やドラマでは、昔からありがちなある意味使いふるされたと言っても過言ではない設定『ブラックアウト』。

本来の意味はどちらかと言えばパソコンやテレビもしくはゲーム等の画面が、起動中なんらかの不具合もしくは誤作動を起こして画面が真っ暗になってしまう事に使用される現代では普段から比較的多用される単なる日常単語のハズだった。

でも自分にとってはまだまだ記憶に新しく忘れもしない去年の9月6日の深夜3時7分頃、この日を境に特に全道民にとってはブラックアウト=大停電(正確には全域停電)という大きな意味が含まれる最重要かつ非日常・非常事態単語に変わった瞬間だった。


この日は前日に珍しく台風が北海道を直撃しあちこち小規模ながらも倒木やらなんやらあって、でも前々から予報されてたからみんな一応それまでに食料を備蓄し飛ばされそうな物は固定したり家の中に閉まったりしてそんなに被害は思った程なく普通の日常生活を送って普段通り疲れて眠っていた人達が大半だったと思う。

そんな自分も例に漏れず体調が良い時に買い出しに行かされたりついでに近所に住む祖母の家で念の為に飛ばされそうな物は無いかチェックし、あれば一緒にまとめて物置や玄関フード(北海道の一軒屋にはほぼ必ずあるガラス張りの風雪避けスペース)に移動したりして過ごした後に夜に通り過ぎる台風の風鳴りの音でなかなか眠れない夜を過ごしたと記憶している。

なので台風一過の後の秋晴れの中ウトウトしながら昼寝してまぁ当然夜には目が冴えてちっとも眠れずに布団の中で携帯ゲームをしたりスマホでなんとなくゲムキを見たりイヤホンをつけてYouTubeの動画を視聴したり、充電が危うくなったらラノベを読んだりこっそり居間に行ってテレビを見たりベランダに出て星を数えたりして過ごしていた。

元々不眠気味というか特に大人になってから寝てる間に何故だが噛み締めてしまう癖があるらしく熟睡しづらい性質で、子供の頃から寝付きも悪いしどちらかと言えば夜更かし大好き派で暗い所でも夜目が利くフクロウみたいなタイプだったから病院に行ってもイマイチ改善されずもう慣れっこになっていた。

その日も夜10時か11時頃に床についたが案の定ちっとも眠れず結局3時頃までウダウダしててもうそろそろ寝ようかと水を少し飲んでからトイレに行って電気を消そうとした矢先だったのはハッキリと覚えている。

もちろん生まれも育ちも北海道な生粋の道産子である自分も今までに何度も地震を経験した事があるので最初はそんなに驚かなかった、がしかし今回の場合は明らかに違った何故なら明らかに長いし途中で消そうと思ってた電灯が切れてしまったからだ。

これはひょっとしたらあの東日本大震災レベルの地震かもと鳥肌が立った私は部屋を飛び出し家族を大声で起こしながら素足で玄関のドアを開けてドアノブにすがり付いていた、その時の私の脳裏には石狩断層帯の活断層(直下)型地震かもしくは浦河沖・十勝沖・釧路沖・根室沖等の海溝型地震が起きたのだと思い込んでいたからだろう。

そして想像を超える長くより激しくなる揺れの中で私の部屋から遅まきながらもスマホやガラケーから地震速報らしいアラームが鳴り響いているのが聞こえたような気がしたが、家の中はおそらくすでに停電しててかろうじてマンションの玄関の廊下の電灯だけが点灯してる状態だった。

だがなんとか収まり家の中もよくある箪笥や食器棚が倒れる等そこまで酷い惨状では無かったのでホッとしたのも束の間、まだ家の中の電灯がつかないしテレビもつかない事に気づいて慄然とした。

また来るだろう余震に備えて寝間着からジャージに着替えて乾電池と懐中電灯を引っ張り出し階下のエントランスに降りるとなんと街灯かほぼ全て消えていたのを生まれて初めて見た、もしかしたら電柱どころか変電所や発電所がなんらかのダメージを受けて停電してるのでは?と他の階の住民達と話しているうちに独り暮らしの祖母の事が気になったので家に戻って電話をかけてみた。

幸いな事にすぐにまだ電話が繋がり連絡を取れたのだが怪我もなく無事だから大丈夫だと告げるものの、また大きな余震が来るかもしれない中高齢で一人だけだと危ないと思い念の為に迎えに行こうと身支度を整えて真っ暗闇の中車で出発した。

信号機も全て消えていた暗闇の中かなりの人々が灯りを付けて歩道にたむろしてるのをいつもは運転マナーが悪い奴等を罵倒してる元タクシー運転手の父親ですら、不安げにいつもよりもいっそう周囲の安全確認を怠らないよう目を光らせながらゆっくりと慎重に進んでなんとか事故も無く目的地に辿り着けてやっとこさホッと一息つく事ができた。

ザッと祖母の家の中も3DSの二画面で照らしながら見回り特にここも何か倒れたり壊れたりしてないのを確認し終わるとちょうど隣が祖母の妹夫婦の家なのでついでに確かに行くと、なんと玄関扉の前に置かれていた自転車が覆い被さるようにドアを完全に塞いでいたので慌てて避けてインターホンが使えないので大声で呼んでみたが二人とも無事だとすぐに返事があったのでそっと胸を撫で下ろした。

その後自分の家にいると年甲斐もなく駄々をこねる祖母をなだめすかしてなんとか車に乗せウチのマンションに戻りしばらくエントランス前に車を止めてライトで照らしながら電気がつくのを待っていたが、見上げてると零れ落ちそうな程の満天の星空からきっと区内もしくは市内全域が停電してるのではないかと推理してると少しずつ非常灯が消えてる事に気づいて慌てて皆それぞれの自宅に一度戻る事にしてまだ深夜な事もあり寝る事にした。

のだがもちろん自分は完全に覚醒状態だったので財布と保険証とガラケーとスマホと3DSをショルダーバッグに入れ、夜明けまでただひたすらベランダで滅多に拝めない本物の天の川を眺めて過ごしていた。

残念ながら自分の持ってるカメラでは解像度が低いのか夜景モードにしてもこの素晴らしく美しい夜空の情景を撮る事ができず、それならばと普段から眠れない時は星を数えていた自分の目に焼き付けておこうと太陽が昇るまで食い入るように見つめて過ごして一夜を明かした。

その日の夜明けの薄紫色の空を見ていて少し前にとあるスーパーボランティアが言っていた「明けない夜はない」という言葉を思い出したが精神的に疲れ果てていたので感動はしたものの涙は出ずに重い体を引きずるように部屋に戻って宝物のピカチュウのぬいぐるみを抱きしめながら布団に崩れるように倒れ込んでやはり眠れず横になってボーッとしていた。

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