STRIDE is ALL     #1




「三郷くん、セット」



 私がインカムに呟くと、彼は「はいよ」と言って、スタンディングスタートの準備をした。

 タブレットの画面を見ると、三郷くんの前の走者……永倉先輩が、まだ走っていた。

 三郷くんと永倉先輩の、ベストタイミングまで、あと少し。

 煩く脈打つ心臓を落ちつかせる。

 ―――――――――――来た。

「……スリー、ツー、ワン」




「GO!」


 三郷くんは、敵チームよりも3秒遅いスタートだった。
 
 けれど大丈夫。

 あの二人のリレーションは、絶対に。
 
 三郷くんは、ブラインドを走り抜け、ブレイクラインを超えた。

 テイクオーバーゾーンに入っても、そのスピードは変わらない。

 永倉先輩が、右手を上げる。

 そして、彼は前走者においついた。



 ―――――――――――乾いた、高い音が鳴る。




 二人の走者の掌が、ぶつかり合った。




 ―――――――――――繋がった!


 三郷くんはその勢いのまま、テクニカルコースに入る。




 ―――――――――――頑張れ、頑張れ。




 もう、第五区間で、リレーショナーとしての仕事が終わった私は、ただ祈ることしかできなかった。



 


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