もしも願いがかなうなら、この私を死なせてください。~第4話~
鏡に映っていたのは私じゃない、男の人の顔だった。それも、ぐちゃぐちゃになってもう誰かもわからないほどの。
でも私にはわかった。誠吾だ。
飛び降りた直後の顔はわからない。でも、飛び降りでもしなければこんな顔にはならないはずだ。
「誠…吾…?」
そう呼びかけた。そうしたら、かすかに声が聞こえた。
「…さない」
「え?」
「…るさない!」
私は、ふるえるのを我慢しながら、聞き返した。
「なんて…言ってるの…?」
「許さないって言ってるんだ!」
「っ!」
私は、もう死ぬかと思った。だって、大声でそう言われたから。
殺されるって思った。でも、それは違った。
「…凛?」
「ごめんなさい…」
「は?なにが?」
私はそういわれて、拍子抜けした。
「…え?だって、許さないって言われたから…」
そういって顔をあげたら、鏡に映っているのは普通の顔の誠吾だった。
「え!?あれ?普通になってる…さっきはぐちゃぐちゃだったのに…」
「ああ、さっきはおどかしただけだから。」
「なにそれー、ほんとに怖かったんだけど。」
そういったら、誠吾は笑いながら、
「ごめんって。それよりさ、ここから出してくれない?」
そういわれて、どうしようか迷った末に、鏡に手を突っ込んでみた。そうしたら、ふつうにするっと入った。
ちょっと驚いたけど、さっきのほうが怖かったから、そこまで驚かなかった。そして、誠吾の手をつかんで、引っ張り出してみた。
そうしたら、誠吾もするっと出てきた。
「あー、やっと出られた。1週間ずっとここにいたんだよ。ってそんなことより、凛の家に住んでいいか?俺のこと見えるの、凛だけなんだよ。」
なんで、と言いかけたけど、まあしょうがないか、と思って、
「いいよ。」と言った。
という理由で、なぜか幼馴染(幽霊)と同居することになりました…
終わり
もしも願いがかなうなら、この私を死なせてください。~第4話~
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