雨上がりvol.1




ごぼっ…ごぼ……
コポコポコポ…………

きつく閉じた瞳の隙間から水がにじむのを感じる。涙だろうか、水だろうか。
「ごばッ……!」
恐怖で手を伸ばしもがくが、生き物のような激流に体を持っていかれた。
感じたことのない恐怖に目頭が熱くなる。

「―――っ!」
振り回していた指先に触れた人肌の感触。僕は死に物狂いでその手をつかんだ。

―――――――翔!
つないだ手のひらに強く握り返され、心が少し安らぐ。


ゴゴゴゴゴ………

大きな唸り声が聞こえたかと思うと、体がちぎれるかと思うほど大きな流れに飲み込まれた。
僕の指先が掴んだ手から引き剥がされていく。

「っ、う…ッ」

ついに涙がこぼれた。目頭が尋常じゃないくらい熱く、喉が苦しい。
「ごぼっ…」
あぶくをこぼした途端、僕の指先が手首から離れる。
大自然の唸りへの恐怖、死への恐怖、そして孤独の恐怖。
それらが冷たい流れとともに胸をぎゅうぎゅう締め付ける。

指先に残る暖かい指の感触を感じながら、ほどなくして僕の意識はブラックアウトした。


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