短編・帰郷
ようやくこの日が来た。
七年もかかってしまった。
いやはや、元々は四年程で戻って来れると思っていたのに、倍はかかってしまった。
しかし、どちらにせよ戻って来れたのはうれしい限りだ。
最初は戻って来れれば奇跡だったのだ。
たかが三年程度のズレなど、ものの問題ではない。
見えてきた。
故郷だ。
ああ、懐かしい。
見事に映える碧と白。
やはり、道のりの単調な景色とは比べ物にならない。
どう変わったのだろうか。
一応ちょくちょく連絡はくれていたが、実際に見れば感動はひとしおだろう。
今まで様々な事があった。
長旅で脚はもうボロボロだ。
もうおなかもぺこぺこだ。
何せ旅立ってから何も食べてない。当然ではあるが。
疲労の為か、ふらふらする。
この前など一時連絡が途絶えた事もあった。
しばらく経ってようやく連絡が来たのだが、話によると向こうは何度もこちらに連絡をくれていたらしい。
つまり、問題が生じていたのはこちらだったと言う訳だ。
目的地は予想と違った景色だった。
私的には平坦な景色よりかはずっと変化に富んでいて良かったのだが、宿泊先がなかなか決まらず苦労もした。
そして苦労して見つけられたのは良いが、そこでもトラブル続きだ。
予想よりずっと長く泊まる事になったし、環境は結構過酷だった。
お陰でお土産もほんの少ししかない。
ま、持って帰れるだけマシとしておこう。
そろそろ故郷につく。
最期に頼まれた写真も撮れた。
もう、これで役目は終わりだ。
判っていた事ではある。
もう、故郷の土を踏めぬ事は。
しかし、個人的には満足な結果でもある。
ああ。
もうそろそろだ。
お土産が届く事を、願おう。
これほどまでに素晴らしい帰郷があろうか。
この景色を見た兄弟は皆思ったはずだ。
生まれてきて良かったと。
帰って来れて良かったと。
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