短編 10センチの虚空
あれは雪の降る日の出来事。
私はある日、何らかの病気によって入院した。
病名は忘れてしまった。
何せ、早期発見の賜物か特に後遺症もなく完治するだろうと言われたからだ。
しかし、私はこの病とは別に、元々声が出ない。
今では慣れ、不自由には感じてはいない。
私には大部屋の窓から2番目のベッドが割り当てられた。
横隣はカーテンによって仕切られ、誰か寝ているのかいないのかの判断はつけがたい。
寝たきりでベッドから降りられないから確認も出来ない。
だが、仕切られていない前から見た限りでは、向かいに人はいないらしい。
軽く済むと言っても、話せない私に友人はおらず、見舞いも無い私は退屈な日を過ごした。
その日、窓際のベッドに彼女がいる事を知るまでは。
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