「ラウ君!」

その天使が、どうしてこの世に現れていて、どうして人と行動しているのでしょうか。

「て、天使・・・・・・?」

「嘘でしょ、本物なの・・・・・・!?」

「あの男の人と知り合い・・・・・・」

先輩達が、それぞれの感情を呟いていました。動揺するのは当然です。伝説上の存在が、今、目の前にいるのですから。

伝説上の存在を目の当たりにしている私達は、いえ、それだけじゃない。

未だかつてない大規模な魔物の襲撃に遭い、それを伝説上の存在と他国の男性に助けられている私達は、

この国における歴史の転換期に立ち会っていると言っていいでしょう。

「リーアちゃん!良かった、良く来てくれた・・・・・・!」

ラウと呼ばれた男の人は、九死に一生を得たと言わんばかりの安堵の表情で、リーアと呼ばれた天使様に応じていました。

応じられて、リーア様は4枚の翼を隠すことなく地上に降りてきます。

「何で一人で先に行っていたのさ・・・・・・!レイさんやカインが心配してたよ!」

「それは申し訳ない。“嫌な未来が見えた物だから”、先行していたんだ。」

それを聞いたリーア様は、一瞬、私とノーブルちゃんを見て、

「だから、この子達を1人で守っていたの?」

しかし、ラウさんは首を振ってその言葉を否定しました。

「・・・・・・だからってわけではないよ。なるべくしてなっただけさ。それに、1人で守っていたわけでもない。」

ラウさんが後方の先輩達に目を向けます。それを見たリーア様は、納得したように頷きました。

「・・・・・・そっか。」

「何であれ、良いタイミングで来てくれた。おかげで、滞り無く魔物の駆除が出来る。」

不意に、ラウさんが私達に背を向けます。何をしようとしているのかは、何となく理解しました。

「戦うの?」

「戦うさ。僕が殿(しんがり)を務めないわけには、いかないだろう?」

「・・・ラウ君。」

リーア様は、死地に向かう友人に対して、何も出来ないのが辛くてたまらないというような表情でラウさんの背中を見つめます。





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運命瞬く七つの空 fate:13 s.3
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