「ピュウ!」

恵吾は乾いた口笛を鳴らした。


戦闘は、ものの30分とかからず終わった。

ようやく司令塔が復旧してきたところにバズーカを打ちこまれ、戦闘員達をパニックのピークに陥れる。俺達の常套手段だ。

「…。」

「どうした、美樹。」

美樹は、壊れた鉄骨に腰かけてうなだれていた。

「やっぱり、慣れません…人の血…なんでこんなに怖いんだろう。もう何度も見てるのに。」

「慣れる方が危ねぇよ。」

俺は、煙草に火をつけた。
仕事終わりの一服は、美味い。


「…ぅぅ…。」


「…ん?」


どこかですすり泣く声が聞こえた。
押し殺したように微かな声だ。


「…。」

俺は、サブマシンガンを取り出し、構え、耳をすませた。
すすり泣きの聞こえる方向を探り、俺はそろり、そろりと歩を進める。

「…く…そぅ…。」


だんだん泣き声が近くなる。

曲がり角まで来たが、多分この先にすすり泣きの主がいるだろう。


カチャン!


「…誰だ。」


俺は、サブマシンガンを突き出し、人影らしき姿に狙いを定めた。

「…スン…スン…」

人影は、気付いた様子もなく、ただ肩を震わせるだけだ。

「…おい…。」


その人影が、こちらを見た。
涙と怒りの表情を浮かべた、少女の顔だった。

「…人でなし…!」


少女は、感情を隠そうともせず、ただ怒りと憎しみの表情を浮かべるだけだった。
その手で、コンバットナイフが鈍い光を放っている。

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