学校まで数百メートルの最後の曲がり角になって、ここまで牛歩戦術をとっていた我々愚連隊には似ても似つかないさわやかな笑顔が合流した。

それが香園ミスキだった。
俺と同じクラスに在籍する優等生で、いつもクラスのムードを作る陽気な少女だった。

彼女はクラスメイトの女子と楽しいおしゃべりを交わしながら、通学のナイルへざぶざぶと躊躇なく紛れ込んでくる。

そして、我々愚連隊はようやく思い出した。
こうして今まで何も話さずに歩いてきた俺達だが、何も考えずとも、こうして楽しく話していることが正常なことなのだと。

どうして俺達は互いに歩み寄ろうともせず、一言も口を聞かず、互いにけん制し合うように、ゆっくりと歩いて登校していたのだろう。


急に、一団の流れがハイペースになる。
香園ミスミを中心に、鈍歩だった移動速度がじわりじわりと加速していく。

俺もその一団の中に紛れ込んで、速度を合わせている。
後ろからの追い上げがキツい。

前から離れると後ろの生徒が嫌そうな顔をする。


それで、俺もしばらくその塊についていった。


ここで俺はこの一団に残ったことを、後悔はしていない。

しかし、誰が予測できようか。
誰がこの状況の「異常さ」に気が付けただろうか。


俺達はとっくに敵陣の中に居たのだ。
臆病という名の敵の懐に。

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スカート&スカー スカート編 s.2
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