「はぁ……。」
「どうしたのさ、さっきから溜め息のラッシュじゃない。」
「……腹が減ったんだよ。」
その言葉を言い終えぬうちに、腹の虫がなった。
虚腹だ。ここまでご機嫌お天道様では、夜の神であろうと栄養摂取もままならん。
おまけに死人が出そうだと言われてこんな田舎までやってきたものの、人っこ一人の訃報すら風の便りにならないとは一体全体どういうわけなんだろう。
御上もサボタージュか、反抗期か?そういや世襲したばっかとか言ってたっけ。
まったく、元老もようやく4200歳になったばかりだというのにもう世継ぎとは……御上も相当テキトーになってきてるな。なげかわしやゆとりの世代。
なんて適当なことを考えて空腹紛らわそうったってそうはいかず、腹の虫が一斉にハレルヤの大合唱を始める勢いであり、いつまでこれに耐えられるのかは疑問ときている。
俺も一応神様なんだけどナァ……。
「給食食ってもまだ足りないの?宮間君の胃袋って本当に広大ね。」
「うるせぃ、こちとら成長期でぇ。」
呆れ顔の吉谷 奈美江には今までに死ぬまで言い続けても尽きない量の不満が積もってはいるものの、現在の腹の虫の状況的に余計なことにカロリーを使いたくないという気分である。
この女は人間のくせに霊媒体質とかいうハタ迷惑な体を持ってやがり、そのため某桃姫が如く毎度毎度連れ去られる立場に立っている。
そのたびそのたび俺が(食事も兼ねて)助けに行く羽目になるのだけれど、コイツときたら俺の正体を怖がるどころか最近に至ってはこき使うような生意気な真似に走り始めたのだ。
非常に遺憾きわまりない。
「死神さんに成長期ってあるの?」
「あるんだよ、ざっと1~200歳くらいまでの間なぁ。」
「へぇ、でも見た目は10代ってことは、人間に換算したら同い年ぐらい?」
「しらねぇよ、大体自分の年齢とかおおよそしか知らね。」
そこは神様事情ってやつだ。
「その割にまだ高校に通ってるんだから、相当留年してるんだね。もしかして頭が弱かったり?」
「潜入調査だっての……あぁ、もう駄目、我慢できねぇ。」
「じゃ、アタシ食べる?」
「お前なんて食ったら腹下すわ!」
というわけで、俺は5時間目の数学の時間、教室の窓から飛び立つのであった。
雨が降らなきゃ狩り禁止、の禁忌を破ることになるが……まぁいいだろ、どうせ御上もゆとりだし。
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みやまクローク (パイロット版) s.2
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