俺の点滴の日がきたとき、駄々をこねた俺の背中をポンと叩いて、
「がんばってね。」
と笑顔でいってくれた。そのひは、なんだか笑顔ですごせた。
俺がゲームを落としたときも、何も言わずただ笑顔でひろってくれた。
おれはなんでいえなかったんだろう。ただ「ありがとう」といえばよかったのに・・・・
俺は「ありがとう」の言葉を心にそっといれた。「ありがとう」という言葉は心に詰まった。


珍しくしぃから話しかけてきた。
「ねぇ、何のゲームしてるの?」
俺がやっていたゲームはさらわれた姫を勇者とその仲間が助ける冒険ゲーム。
俺は夢中になって内容を話した。
「へぇ。おもしろそうだね。」
しぃは興味を持った目で画面を見た。
その時、なぜか俺のゲームを持つ手はしぃの方に突き出ていた。そして、
「やるよ。」
と、一言言っていた。ほんとは大事なゲームだったのになぁ。
「本当に?ありがとう!」
しぃはうれしそうにゲームをうけとり、うれしそうに電源を入れた。
二人で、勇者の名前をギコ、白魔導師の名前をしぃにして一緒に進めることにした。
これでしぃに「ありがとう」って、伝えた心算だったのかな。だとしたら、あの頃の俺は・・・馬鹿だった。
まだ小さかった俺は、わからなかった。しぃがどんなに辛かったのか。なんでだろう。
時間があれば、看護婦さんに近くの公園にしぃ一緒につれてってもらった。
その日、しぃから、不思議な話を聞いた。
―――――----‐-―ギコ、私ね。もし死んだら、星になりたいの。―---
「・・・・・え?」
その時はよく理解出来なかったが、今になってわかって来た様なきがする。しぃが言いたかったことが。
「へへへ。なんでもない。ねぇ、川の方、行ってみない?」
しぃはなんでもなかったかのように笑いながら立ち上がる。しぃは泣き顔なんて見せたこともないし、泣き言も、弱音も言ったことはない。
すごい病気を持ってるのに。ただしぃが尊敬できた。
だけど、すこしずつきずいてきた。

あいつはずっと戦っていた。俺じゃ勝てるわけのない、恐ろしい病気と。



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