俺、入間 康介(いるま・こうすけ)は眠い目を擦りながら寝衣を脱ぎ捨て、私服に着替えた。日曜日の出来事である。
部屋の中は至って健全である。男が一人暮らしと言うと部屋の隅々にビニールが散乱しているイメージがするが、俺はキレイ好きなのでマメに掃除をする。そのため男友達を家に呼ぶと変な目で見られることが殆どだ。全くもって失礼な話である。
ふと書斎の机に飾った写真が目に入った。そこには俺と俺の元恋人が公園で2ショットをしている。無理にでも笑顔を作ろうとしている俺とは反対に、彼女は愛想もヘッタクレも見せず、真顔だ。よくみるとふてくされたようにも見えるから面白いので飾ってある。
今日は仕事も休みだ。しかし休日をダラダラして潰すのは勿体無い。今日は放浪の旅にでも出ようかと思ったり、録画していたテレビでも見ようかと思ったり。そんな矢先。
自室を出て居間へ向かうとすると、台所からトントンと包丁で何かを切る音がしていた。

そこには見知らぬ女性が居たのだ。

俺は背後から忍び寄り、ジッと観察する。年齢は15~6歳程、エプロンを付けた女が俺の家で料理をしていた。誰だコイツ。
とりあえず俺は眠い目を擦りながら彼女に声をかけた。
「おはよう」
すると彼女は手を止め、少し驚いたような表情も一点、すぐに笑顔で、
「おはようございます」
と返した。おいおい何か会話成り立っちゃったよ。つか本当に誰だよ。
どこか懐かしく、どこかおかしい。
そう、どこかおかしい。





……そうだ。
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なぁ俺、放浪しねぇか? s.1
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