「は?文化祭には出ない?」
ギターのチューニングをする手を止めて緋色がこちらを向く。
「う、うん…」
「何言ってんだよ、文化祭に向けて練習してきたのにそれじゃあ意味が…」
自分達の初舞台になる文化祭、それに向けて練習してたのに、出ない。いや、正確には出れない、だ。
うちの吹奏楽部はマーチングもやっている。
毎年支部大会と文化祭が被ることはなかったのだけど、今年は会場の都合で運悪く文化祭初日と被ってしまったのだ。
その初日にステージ発表で出る予定だったのだ。
「私も出たい、けど、しょうがないよ…大会と被っちゃったんだから」
「しょうがないって…そんな、お前…」
「ごめん、こればっかりはどうしようもないから…」
「…………」
ギターを構えたまま一点を見つめ静止する緋色。
彼が1番楽しみにしていたのはみんな知っている。
心が痛い。
「悪い、遅くなった…ってどうしたんだ、2人共暗い顔して…」
集合時間より10分ほど遅れてアロ、シバ、ウルシがスタジオに入ってくる。
この3人にも、話さなきゃないんだよな…
「あー…その、話さなきゃいけないことがあるんだけど、いいかな?」

(○Live6より)



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F〜始まりのコード〜 サンプル s.1
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