「ねぇ、待ってくださいよー!」

あの人は待ってくれない。

「ねぇー!待ってくださいってばぁー」

何度も声をかけているのに、振り返ってくれもしない。

「もうっ!待てって言ってるじゃん!」

私が歩を止め、ほおを膨らませて言うとあの人はやっと振り返った。

「…るせー。 ついてくんな。」

私はあの人に駆け寄るーーつもりだったんだけど。

「わっ⁉︎」

小石につまずき、前のめりになった。

地面がどんどん迫ってくる。私は、恐怖のあまり目をつぶった。



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夏色金魚2 s.1
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