金魚。そう、私は金魚。
この狭い狭い水溜りの中で、人間たちの網から逃げ回っている。
「おい、この金魚一体いつになったら弱るんだよっ」
ばしゃんっ。私に触れたってすぐに網は破れるのに。私を掬おうとしても無駄なのに。
「ちっ、いーよもう!」
さっきからあの人ああ言って何度も戻ってくる。
その時ーー。
ぱしゃ、私の体が宙に浮く。
まずい、油断していた。私は必死にもがくが、すぐに器に入れられてしまう。
「兄ちゃん、やるね!」
「....や、そんなことないす。」
私は透明な袋に入れられて、外の世界に出る。
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夏色金魚 s.1
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