僕が住んでいる北見団地の中央には、紅の桜がある。
 あまりにも赤いものだから、あの桜の下には死体が埋まっていて、桜はそれを栄養にして生きている、なんて話まである。
 美術の課題で、その桜を写生しようと思い、春休み初日、僕はそこに訪れた。

「え……………?」

 赤い、紅い桜吹雪の中で立っていたのは、僕と同じくらいの年齢の、まだこの時期には薄すぎるのではないかといえるワンピースを着た、透明感のある少女だった。

「誰……?」

 僕が思わずそう呟くと、少女は僕の方を向いた。

「……私、……私は、桜子」





「……お願い、助けて」






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桜と少女 s.1
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