私のクラスで、いじめ、というものは、もうあたりまえだった。
 派手な女子たちに、内気で恥ずかしがり屋、人とかかわるのが苦手な私がいじめられる。
 出席日数のためにたまに学校に来るけれど、そのときはいつもこんなかんじだ。
 机の上に花瓶と、萎れた花があって、それをどかすと、あれやこれや言われる。
 ……だから、学校、きたくないのに。








「お前、アレ買ってこいよ」

 アレ?

 突然呼び出された内容は、そんなものだった。

「え、と、あ、あの、アレって……」
「いーから早く行ってこいよ!!!」

 ボスっと、おなかに女子の足が沈む。
 ――――痛い。

「アレって分かってんだろ!?タバコだよ、タバコ!!!」

 でも、タバコって、私たちの年じゃ買っちゃいけないんじゃ……。

「む……り、だ……よ……?わたし……じゃ……かえない……よ……」
「はぁ?」
「……ムカつく。ヤキいれてやろーよ」
「……え!?」

 ヤキ、って、あの、タバコを、肌に押し付ける、やつ……?
 嫌だ。
 女子の一人が、タバコを取り出し、ライターで火を付ける。

「いや……!」
「騒ぐんじゃねーよ」

 タバコが、私の腕に近づいてくる。
 怖い――――――


「佐藤ー?……って、アレ、何してんの?」


 タバコが腕まであと一センチもなくなったとき、教室のドアが開く。
 隣のクラスの男子だ。

「って、お前らそれタバコじゃん!?なにやってんだよ!?」
「あ、いや、えっと……」
「初音さん、大丈夫??」

 男の子が近付いてくる。それに伴うように、タバコは私の腕から遠くなる。

「だいじょ……ぶ……」

 女子たちは逃げていったけれど、こんなことされることがこれからもあるのは、少し怖かった。




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深海少女 s.1
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