「おはよ……」
 
 教室に入ると、安藤の席の周りに、三芳と髙梨の姿があった。
 もう、見慣れた光景だ。
 髙梨も、元々三芳と幼馴染だったこともあり、すぐに打ち解けた。

「お、おはようっ、葉山」
「おーっす」
「遅かったね~、どうかしたの?」
「ん……ちょっとね」

 ……まあ、言ってしまえば徹夜でクッキーを作っていたのだが。
 男という事に甘え、今まで料理なんて全くしてこなかったものだから、何度も失敗し、納得いくものが出来たと思えば朝になっていた。
 まあ、仕方がない。何せ今日はホワイトデーだし……ね?
 安藤はなんとなく察したようで、口元を押さえ、ふふふ、と笑みを漏らす。

「……なんだよ、笑うなよな」
「いや~、うふふ~」

 青春だねえ、と安藤がつぶやく。
 お前だって、というと、安藤は悲しげな笑顔を浮かべる。
 ……三芳と上手くいってないのか……?

「……あ、もうすぐ時間だよ。チャイム席、ちゃんとしないと」

 安藤のその言葉に、髙梨は無言でうなずき、軽く手を振って教室を出ていった。
 優等生だし、そこは気にするんだろうな。
 
 自分も席に戻り、やはり先程の様子が少し気になったので、安藤にメールを送ってみる。

『三芳と、何かあったの?』

 安藤はマナーモードにしていたようで、震えたスマホを見つめ、困ったような顔になる。

『何かっていうか……わたし、ふられるんだよ~』

「はっ!?」

 突然のことに、思わず小さく叫んでしまう。
 
「どうした葉山」
「あ、いや、なんでもないです」

 振られる、って…………?



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3/14に言の葉を s.1
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