不思議と驚きはなかった。悲しみもなかった。

知らないヤツだった。情けなく死んでいた。


この街には富裕層が多い。街中を黒い蟻んこの群れみたいな会社員たちが這いずって、そいつらが運んできて作った蜜をすすっている。


今目の前で死んでいるこいつは、そういう連中に吸い尽くされて死んだ、哀れな宿無し人だった。



哀れ?

本当にそう思っているのか?


分からない。


街中、人が一人死んでいるというのに、誰も足を止めないんだ。

チラっと横目で見るまではするけど、だからって何かするわけでもないんだ。




これは、誰がどうしてくれるんだ。

教えてくれよ神様。


この世界は狂ってる。

チューニングが合ってない。

不協和音が鳴っている。


それに気が付くのが遅すぎた。


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これは逃走ではなく、宣戦布告である s.1
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