「なんですか・・・?それ。」
「いいか、ここの住人たちは全て現実の自分たちの欲望で出来ているんだ。欲望の持ち主を殺してしまえば、欲望も無くなる。
そういうことだよ。」
「ひ、人殺しをしろってこと!?」
「ちがう。基本的には、人は死んだりしない。死ぬのは、欲望だ。」
裕也は冷静に答えた。だが、杏奈と恵麻は明らかにに動揺していた。
「でも、形的には人間を殺すってことになるわけだよな・・・。」
「まあ、そういうことだね。形は、人間を殺すことになる。本当は、欲望を殺しているわけだけどね。」
「そんなのっ・・・。私に出来るはずがないじゃない!皆を・・・この街の人たちを殺すなんて!!」
杏奈は突然大声で叫んだ。
「だから形だけだって。」
俺がそういうと、杏奈は俺をきっとにらみつけた。それは、いつもの殺人光線とは違う真剣な目だった。
「私は・・・。私はそんな、この街の人たちを裏切るようなことしたく無い!そんなことするんだったら、ここで死んだ方がマシよッ!!」
「・・・私も、そんなことしたくありません。たとえ形だけであっても、お世話になった人たちを殺すなんて、できません。
もし殺すようでしたら、私を先に殺してください。」
女子二人には、抵抗があるのだろうか。だけど・・・。
「だけど、欲望を殺さなきゃ俺たちは、もとの世界に帰れないんだぞ?!」
「そうだ。なら、手っ取り早く殺して、もとの世界に戻った方がいいじゃないか?この街の人口は大して多くない。
うまくいけば、すぐに帰れるんだぞ?」
「うん・・・。そうすれば元の世界に帰る鍵はすぐ見つかる・・・。」
男子と女子で意見が分かれた。
「だったら、私たちあんたたちには手を貸さないわ。」
「りょ、料理だってもう作りません・・・!」
「ああ?だったらお前らは早くここから出て行け!!ここは俺が案内した場所だぞッ?」
「この本は私のものよ!」
「みっ、みんなおち・・・」
まずい、このままだと・・・。
次へ

s.1
やめる