「どっ、どうしましょう?」
「落ち着け。大丈夫だ。皆いるだろ?」
俺が恵麻に声をかけると、彼女はこくりとうなずいた。
「地形に変わりはなさそうだ。変わっているのは月と、辺りの空気ぐらいだな。大丈夫だ。俺はこの世界から抜け出す方法を知っている。」
「さすが裕也!準備がいいな。」
俺は明るく振舞っては見たものの、内心怖くて仕方がなかった。
「で?何よ、そのぬけだす方法ってのは?」
「鍵だ。」
「「「カギ?」」」
俺たち三人は声を合わせて裕也に聞き返す。
「鍵・・・。そう、この世界を創った張本人だけが持っている、扉の鍵・・・。扉は欲望の晩餐の表紙だ。ホラ、鍵穴があるだろ?」
裕也に言われ、俺らは杏奈の持っている本の表紙を見た。
そこには小さくて、古びた鍵穴が付いていた。それも、本物の・・・。
「じゃあ、作者を探すのみね。ソイツはどこにいるの?」
「そうだな・・・。分からない。作者は物語の中で、何歳にでも誰にでも成りすましている。」
「ちょ、ちょっと待て。ここは本の中ってことか?」
俺が尋ねると、得な二人の殺人光線がとんできた。
「馬鹿だな。そんなことにもきずかなかったのか?」
「これだから、あんたはモテないのよ。にぶいわ。」
「わ、私もこれくらいは・・・・。分かりましたよ・・・?」
「え。俺だけ?」(大丈夫。多分私もわかんないからw)
「まあ、いい。とりあえず探検してみるぞ。」
俺だけわけのわからないまま住み慣れている、いつもとは違う街を探検し始めた俺たちだった。
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