ひずんだギターとバスドラムの音が、私の鼓膜を強く打ちならした。
暗い視界、隔離されたような世界の中、イヤホンからの警報。
いやに冷え切った車内は、私たちを刺すようだった。
私はぼんやり顔の窓の外を、フィルム越しに眺めていた。
そこでは思考停止にだらけた群衆が、文明の馬に揺られている様が見える。
私はこの景色を何と形容するだろう。
灰色鉄板エンボス加工。そんなところが、妥当だろうか。
ゴトゴトと煩わしい鉄線の上は、酷く無干渉な、それで酷く残酷な瘴気に満ちている。
私の横では、鳥面の糸目の彼が静かに倒れこんだままこっちを見上げていた。
窓の外の外に流れる黒い風を眺めながら、私も無干渉を決め込んで、そっちは見ないことにした。
そうとはいえども、心の奥に引っ掛かりを感じていた。
でも、もうこうなってしまったのだから、私にはどうすることもできなかった。
「……なぁ、頼むよ。」
糸目の彼がこっちを見上げて、擦れた声で手招いた。
赤い眼が糸目の隙間から見えた。
真っ赤な胸をつかんだ右腕、人の顔には見えない、残酷な顔。
泣きそうなほど怖かった。
でも私はここで泣くわけにはいかない。
「……無理。」
それだけマスク越しに呟いた。
ガタリと揺れたコンテナに、彼の体が少し飛んで、右腕がさらに彼の胸をえぐる。
そのまま彼は、ピクリともしなくなった。
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