「彼女は俺を愛していると言ったよ。」
俺はぽつりと呟いた。
その言葉が本物だったのかは、俺には分からなかった。
ただ、疑うことを知らなかった。
「本当にそれは、愛だったのか?」
銃を持った男は、一歩にじり寄る。
「俺は少なくともそう思ってた。」
火薬が弾ける音がして、鉄の臭いが鼻を突く。
胸を鉛が貫いたのだ。
「そう思ってたのは、お前だけだったんじゃないのか。」
痛い、痛い。
胸が痛い。
死ぬ?死にたい?死ねない?殺したい?
分からない。
俺は彼女を、信じたい。
「甘えるな。」
もう一発、怒号が胸を駆け抜ける。
いいじゃないか、甘えたって。
俺はまだ、子供だもの。甘えるのが、普通じゃないか。
「甘えるな。」
鳥が、遠慮なく心臓をつついた。
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荒野にて s.1
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