公園のベンチで長月が隣に座っている。

こうしているとカップルに間違われてもおかしくない。

ちょっとだけ頭の中で色々考えていると、長月は次のようなことを言った。

「9月1日の朝のこと、覚えていますか?」

「ん? 昨日の朝か?」

長月は次の言葉を口にしようとしたが、考え込むように口を閉ざした。

暖かい風が2人の間を駆け抜ける。

「あなたは、その時、連続している時間を巻き戻した」

「はぃ?」

「理論上の説明は出来ません。でも、記憶に残っているはずです」

テスト中見た夢、倒れた少女を見たあの夢・・・・・・。

「夢の中で見た世界・・・・・・か」

独り言のようにポツリと言った。

「それは夢ではなく、現実です」

「で、でも俺はここでちゃんと生きてるし、あの少女は」


ここでやっと気付いた。

倒れていた少女=長月ということに。


「倒れていたのは、私です」

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僕たちはもう1つの世界で生きていた Ⅴ s.1
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