スラム街。
家族、想い人、家、居場所
そして身体。
いろいろな物を失くした人間がここに集まってくる。
昔より微かに巨大化した太陽の光が降り注ぐ砂漠の町には、活気はあっても元気が欠けていた。
道行く人は皆腰を折り、いつ襲ってくるかわからない恐怖に怯えながら忙しく歩いている。
・・・そしてその恐怖がこのスラム街にも手を伸ばそうとしていた。
「・・・ちっ・・・面倒掛けさせやがって・・・。」
スチールグレイのザラザラとした装甲が、柔らかく、だが冷たく光を反射している。
防砂措置と冷却装置の改良に手間取ったために二度足を踏んでしまった。
だからランスロットは譲ったのか・・・畜生。
そんな逆恨みを覚えながらも、ブレモアは砂のビーズを蹴った。
乾燥した空気の中、陽炎に包まれたスラム街が前方に見えてきた。
「・・・まあ・・・いい。そのぶんスッキリしてやるぜ・・・。」
金属の割れるような音が、熱砂を翔けた。
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